TPICS-1st anniversary-




よしむらさおりファーストアルバム『二つのスカート』
発売1周年を記念して、今改めてよしむらさおりにアルバムの楽曲について振り返ってもらいました!


-『二つのスカート』が発売されて1年経ちましたが、この1年はいかがでしたか?

CDができたことによって幅が広がったというか、アクティブに活動できました。ライブの時に自分の曲を知っててもらった上で歌うと言うのは新しい感覚でした。

-では『二つのスカート』のアルバムについて今改めて伺います。
総評として、どんなアルバムになりましたか?

最初のアルバムですので、自分のこれまでの人生を凝縮したような1枚になったと思います。でも他の方たちの手が色々と加わっていて自分だけじゃ出せない音になっています。それはいい経験だったのですが、今度はまたもう少し自分の可能性を広げてみたいです。この1枚目が、もっと自分の音楽をやっていきたいなというモチベーションにもなっています。

-では1曲ずつ順番にお伺いしたいと思うんですけれども。

1曲目の『二つのスカート』は私がもし曲を作れるようになったら絶対書きたいと思ってたテーマで、構想のようなものはずっと高校時代からあったのですが、やっと形にできました。
原曲は今と結構違っていたんです。わかりやすく伝えるために何度も歌詞を書き直したりして情景が見えやすいようにいろいろ工夫しました。

-さおりさんは曲が先のタイプですか、それとも詞が先のタイプですか?

基本的には詞が先のタイプだと思いますが決まってはいないです。

-この曲はどっちが先なんですか?

この曲は曲が先かもしれないですね。一番最初の最初の頃は一人では全然曲を作れなくて、私が鼻歌を歌ったようなものにピアノでコードをつけてもらって、という所から始まって。そこに歌詞をあてていきました。
最初は『夢を見る』という別の曲だったんですが、そこから人に聴いてもらうにあたって伝わりやすいように。ちょっとキャッチーなものにしたいということでサビのメロディを共作してもらいました。それに合わせて歌詞も、何回も書き換えて、今の形になりました。

-アルバムの総評の時も言われていましたが、一人ではできなかったということですね。

本当にそうですね。サビがすごく頭に残ると言ってもらえるのはやっぱりトム(山崎智隆氏)が作ってくれたメロディーのおかげだと思います。これが完成したときに自分でも歌詞とメロがすごくハマっていると思いました。やっぱり最初に作った曲っていうのは何か思い入れが強いというか、伝わりやすい何かがあるのかもしれないと。

-高校時代から構想があった思い入れのある曲ということで、もう少し曲について教えてもらえますか?

イベントで歌う時は説明する暇がなかったりしますが、自分のライブの時は必ず「これはあたしの実体験を元にした曲で、女の子が女の子に片思いをするという曲です」と前置きをしてから歌うようにしていて。さっき言った歌詞を変えた、というのもそれがもう少し濃く伝わるように。変える前はもっとぼんやりしていて、ただ片思いの曲という感じだったのですが、誰が誰を好きなのかという事がはっきりするように「二つのスカート」という言葉を入れました。
このアルバムを作るときから、誰が誰をどんなふうに好きであっても、それが当たり前として受け止めてもらえるような世界になればいいなと、勝手に考えていました。私が前置きをして歌うのもイメージを植え付けるためじゃないんです。逆にイメージの幅を増やしてほしいという思いを込めて、そういうお話しをして歌ってます。
ただ何も言わずに歌うと、歌詞で「二つのスカート」と言っていても、男女の恋愛だと置き換えられてしまうというか、想像してしまうというか。毎回思いを伝えることによって、聴いてくださる方に選択肢を持ってもらいんです。

-確かに「片思い」って言うと男女のものと思いがちかも。

ミュージックビデオでも高校生の女の子2人に本当に出演してもらって、その世界感が伝わるようにはしているんですが、でも、それでもやっぱり伝わらないことがあって。意外と人の脳みそって凝り固まってるよなぁ、と思いつつ、そういうことを少しでも私の曲でほぐせるんだったらいいよなっていう思いで歌っています。

-男女の恋愛を当たり前と思っている方でも、そう前置きされていれば、別に恋愛は男女に
限ったことではないと思えますよね。

『二つスカート』を歌う時に説明をすることによって他の曲を演奏したときに「あ、これももしかしたら」というように色々想像してほしいな、と思っています。

-聴く人の余白を増やしていると言ったところですね。では2曲目『オレンジの箱』についてお願いします。

これは歌詞を変えたりもしましたが、ほとんど最初のままです。アレンジはかっこいい感じに仕上げてもらっています。
この「オレンジの箱」っていうのが何なのかは、あまり説明しなくてもいいのかなと。聴いて下さった方の想像でいいかなと思っています。

-ではまあ、「オレンジの箱」については各々で、ということで?(笑)

各々で(笑)。でもこれはすごく意味のある深い言葉を言っているというより、自分でもわけのわからないまま歌詞を書いて、後から自分でも「ああ、こういう事が言いたかったのかな」と納得していったような感じです。

-へえ〜わけのわからないまま?

わけのわからないまま(笑)。最後の最後まで本当にわけのわからないままだったらさすがに書き直すとは思うんですけど(笑)。でも、サビの部分とか、サビの歌詞としてはちょっと変ですよね。

-「どんどん削って確かめて」は、ちょっと?(笑)

普通だったらどうなのという歌詞なんですが、でも私の中ではそれがカッチリきて。「核心に迫った」って、自分でも「?」みたいな感じだったんです(笑)。でも脳みそは色々と結構勝手に考えてるんですね。私の脳みその信号を受け取って共感して下さる方もいらっしゃいます(笑)

あと、私はアコースティック編成でライブをする事が多いのですが、これはバンドでやるとすごく楽しい曲なのでぜひバンド編成のライブで聞いてほしいです。

-ほんとにバンドサウンドがかっこいい曲ですよね。では3曲目『ぐしゃ愚者』について。

これはアルバムを作るにあたって、1番最後に収録候補になった曲です。
私は気を抜くとマイナーっぽい暗い曲を作ってしまうので、明るい曲を作ろうと思って書きました。でも案外、曲自体はポップな感じがするけれども、歌詞を聴いてみたら「めっちゃマイナス思考じゃん」という(笑)。そのアンバランス感が自分でも気に入っています。

-ずる休みですしね?(笑)

はい(笑)。これを聴いてからだと、誰も私の病欠を信じてくれない(笑)。これからも信じてもらえないかもしれない(笑)。
人間には周期みたいなのがあって、すごく調子が良くて人生楽しいなって思う時と、意味もわからず落ち込んでるなっていう時とあると思うんです。これは意味もわからず落ち込んでいるときの曲なのかな、と思っています。

-でも割と共感を呼ぶのかな、とは思ったんですが。

自分はダメ人間だなぁと思いながら書きました。「周りの人はいつも頑張ってるし、立派な人ばっかり」そんな事を考えながら作ったのに。意外と「この曲は私の事だ」って言ってくれる方がいて。しかもそれを、私の目から見ると「ちゃんとしてるじゃん!」という人が言ってくれるので「絶対嘘だ〜」とは思いながら(笑)。でもそんな風に言ってもらえるのは嬉しいです(笑)。

-実際にずる休みしてなくても、休んじゃいたいなって思ってる人はいるでしょうからね。

はい、だから日頃一生懸命頑張ってる人は、「こんなやつもいるんだから自分は立派じゃん」て思ってもらって、同じ気持ちになったことがある人は「よしむらでも一応生きているんだから、自分はまだ大丈夫」って思ってもらえたら(笑)。

-4曲目『いつもいつも』はどうでした?

これも「明るい曲を入れようプロジェクト」で入ってる曲で、かわいらしい感じに仕上がっていて。曲と私の人柄が食い違っていてもクレーム受けませんよ、という感じなんですけども(笑)。

-クレーム受けません(笑)。たしかにこの曲かわいいですよね。

私は歌うには可愛すぎるかなと思うんですけど、好きって言ってくださる方もいるので歌っていきたいなと思います。
幸せな気持ちをそのまま幸せなメロディーにのせて、明るいアレンジで届けるっていうのは、たぶん私がなかなかしないことだと思うので、これからもちょっと数少ないかなという貴重な曲です。基本的にひねくれマンなんで(笑)。

歌ってる時は全然恥ずかしくないんだけど、自分で聴き直すとちょっと恥ずかしい(笑)。でもこういう明るい曲を歌っていける自分にもなりたいなと思います。

-5曲目『銀河』についてお願いします。

これはまず作曲が自分じゃないっていうところが大きくて。このアルバムに入ってる曲の中で1番作詞に苦労した曲ですね。
サビでぱーんっていう伸ばしがあって、開(ひら)けるイメージにしたいなと。
で、まさに内容は『銀河』の歌詞を書いているときの自分の状態っていうか。
もうなんか全然歌詞が出てこなくて(笑)。本当に全然出て来なくて。眠れないし(笑)。

-明け方に。朝になっちゃったんですね(笑)。

朝になっちゃって(笑)。しかもそれが1回や2回じゃないっていう(笑)。頭を悩ませて、なんかもう抜け毛も増えたんじゃないかみたいな(笑)。
でも出来上がってみると、その曲自体に励まされて自分もいるというか。やっぱり完成してすぐの時と、しばらくして自分の曲を聴くときの感覚って違っていて。
出来上がってすぐの時はかわいいかわいいじゃないけれども「曲は子供のようだ」とか言いますよね。出来上がったばっかりの曲は新鮮だし愛しいし。
でも、自分でも時が経って新しい解釈が生まれるというか。

-この曲は特に、その「時が経って新しい解釈が生まれる」傾向が強かったという事ですか?

というよりは、自分が作曲していない、ということも大きいかもしれないですが客観的な感覚で聴いてしまいますね。

作曲が自分か自分じゃないかっていうのは本当に大きな違いで。『二つのスカート』は自分のテイストがベースになっているから、イメージが組み立てやすかったんですが、『銀河』は全く何もないところからだったのでイメージを育てるのが難しかったんです。ですが、そういう経験が出来て良かったと思っています。これも自分1人じゃできなかった事だと思うので。

-かなり壮大で雰囲気で、キャッチーなメロディですよね。

アルバムの中で異質な光を放っているみたいです。私の曲にそんなキャッチーな曲がないから、この曲がぱーんと耳に入ってくるみたいですね。「銀河好き」と言ってくださる方が多いのは耳に届きやすいからなのかな、と。そういう勉強にもなりました。

-では6曲目の『少しずつ』はどうでしょう。

これもトムの作曲で、作詞を悩んでいたんですけどある日つるっと全部出てきて。つるんと出てきた分、自分の中では小難しくなくてその時の素直な気持ちで書けました。
自分にはこんな爽やかな曲は書けないからトムのテイストの曲ではあるかなと思います。
夏に発表するってことは決まってたので、アルバムには夏の曲を入れたいなと考えていました。「夏の風」や、「入道雲」というワードも入っていてかなり季節感のある曲になりました。

-暑い夏の日の坂道を登るのは、辛くないですか?

でも私は案外散歩が好きで、夏場でも登りたくなっちゃう。登ったあと後悔するけど(笑)。登る前はわくわくします。

-これも結構ファンが多いって聞きましたけど?

やっぱりキャッチーで何か聞きやすさがあるみたいです。この曲は私としてもノリで聞いてほしいなと思っています。
少し歌詞に触れると、私は何でもパッと器用にできるタイプではないんですが。「不器用で嫌だなぁ」と思いながらも、「まぁ少しずつでも良いか」という自己肯定感がうまれた曲でもあります。

-いきなりなんて、できないですからね。

うらやましいですよ!(笑)何でもパッとできちゃう人。
でもちょっとずつしかできなくても、それでも生きていかないといけないですから。
ですが捉え方は人それぞれなので、自由に解釈してもらいたいです。恋愛の曲としてでも人生の曲としてでも、何でもいいんです。

-最後にいきましょうか。『限りない青』

これはアルバムどうこうという前に作っていた曲で、歌詞とメロディが一緒に浮かんできました。
電車に乗りながら、歩きながら、部屋で寝転びながらずっと曲にしたい思いを頭の中でまとめていたのですが、ピアノの前に座って、ちょっと歌ったらすーっと。
すごく思い入れの強い曲なので絶対アルバムに入れたいなと思っていたのですが、ただちょっと問題があって…。

-問題?

元々この曲は7分以上ある曲で(笑)。みんなに長い長いって言われて(笑)。でも私は削りたくなくて。泣きながら「嫌です、1つも無駄な言葉なんてない」って言ってたんですが、最後には「7分あって聴いてもらえないよりも、凝縮したほうがいいのかな」と観念して(笑)。
メロディーとかはあんまり変えずに、でもバッサリなくなった部分もあったので、もう一度歌詞を組み直しました。
サビの部分は意外と変わってないんです。Aメロは2行しかないんですが、もうそこにぎゅ〜〜〜っと!詰まっています。

-3分ちょっとで、半分くらいになってますもんね。

そうそう、半分ですかって(笑)。
でもこの曲はとにかく思い入れが強くて、大切なライブで歌うと泣きそうになります。
『限りない青』と『二つのスカート』はテーマが似てると思っていて。伝え方は違うけど、「人と違ってることとかが悪いことじゃない」という。

このCDのレコード発売ライブで、歌う前に話したことを自分でもすごく覚えていて。
同じものを見ていても見え方が違っているかもしれないし、それは自分にしかわからない世界。
例えば目が見えない人が公園に立っていて感じることと、目の見える人が同じ公園の同じ場所に立って感じる印象っていうのは違うかもしれないけど、どっちが正しいっていうわけじゃなく、どちらもそれは感覚として素晴らしい。
どんなに大切に思っている人とでも感覚は絶対共有できるものではないから。自分の大切な人であればあるほど、違う感覚を持っているということすらも尊いな、と。
そういう感覚が世界中に広がっていけばもっといろいろ解決していくんじゃないかな、とか。

-世界平和、ですか?

世界平和はスケールが大きすぎるけど(笑)。でも結局自分の近くにいる人を思うことが、世界平和に繋がってるのかなぁとか(笑)。そういう、とてつもないことを考えたりする日もあります(笑)。とてつもないことを考えたり考えなかったり(笑)。

-すみません、世界平和なんていうワードを言ったばっかりに(笑)

でも結局世界のことや、宇宙のことも全部日常と繋がっている気がして。
『限りない青』をこのアルバムに入れられてよかったなと思っています。今でも大切な曲だけど、これからもずっと大切な曲なんだろうなと確信してます。

-いつかその7分版の『限りない青』も明かしてほしいですね。

明かしたい!言いたい事は同じなんですが、7分版の方が噛み砕いているからわかりやすいと思います。アルバム収録版は凝縮しているので。

-今回アルバムデザインも『限りない青』のイメージをベースに作っていった訳ですけれども。

私の中では『二つのスカート』も『限りない青』もテーマが共通していたから全然違和感はなかったです。『二つスカート』っていうアルバムなのに?と言われたりもしましたが(笑)。
今後はもうちょっとわかりやすさを意識したほうが良いのかな、とは思いつつ、1枚目はこのデザインで間違ってなかったんじゃないかと思います。

-それでは最後に一言お願いします。

これからもよろしくお願いします。




平成30年7月末日 台風が来た夕方